「…もう、あなたはそうやって、ほんっとにシアワセそうに笑うなぁ」

律さんが言いながら、私の鼻先を右手の人差し指と親指できゅっと摘まんだ。

「律さん、違います。″シアワセそう“じゃなくて、“シアワセ″なんです」

満面の笑みを浮かべた私を、強く強く抱きしめてくれた。

青いカーディガンから仄かに薫る秋は、私と律さんの毎日のかたまりで。

ちいさな変化に気がつけるのは、いつもとなりに律さんが居てくれるからだと思う。

いつかこの、こっくりとした青色が色褪せてしまう日が来たとしてもそれは、ふたりで毎日を積み重ねた証で。

その日が来ることを、ココロの拠り所にできる。

その頃にはきっと、ふたりとも白髪で。

その白くなった私の前髪さえも、愛おしそうに触れてくれる律さんが、容易に想像できる。

その指先は、どこまでもいつまでも、ぬくい。

律さんの青いカーディガンの裾に、そっと触れてみる。

青い布地すら越えて伝わる、優しさとぬくさ。

「律さん」

たったひとこと、呼び掛けたら、

「はい」

変わらない返事は、愛おしい。

「ずっとずっとずーっと。一緒にいてください」

「もちろん」

返してくれた、優しい目の中に吸い込まれそうになる、優しい夕方。




_青、藍、紫、赤、オレンジ、黄、緑、_