とくとく、と、鳴っている律さんの心臓。

穏やかで、優しいリズムは律さんそのもの。

「あなたをこうして抱き締めるのも、手をつないでただ、歩くのも。もちろんキスも、あなたの前で泣いたことも。それをただ、あなたが優しさで包んでくれたことも。あなたの前髪を切ることも」

全部“特権″なんです。オレ、の。

だからあなたは、安心していつもオレのとなりにいてください。

あなたがいてくれるだけでオレは、どんなにしんどい毎日も越えられるから。

だから、オレに黙って、こんなにがったがたの、前髪作らないで。

その末尾は、笑い声で震えている。

「もー!律さん!笑わないでくださいッ!」

「だって、がったがたで、しかも切り揃えたらオンザ眉になっちゃったから。あはははッ!!」

言いながら、涙目で笑う律さんを見つめるうち、なんだか可笑しくなってきて、私も笑っている。

律さんとふたりでいたら、笑いが絶えないなぁ。

気がついてまた、笑う。