律さんの目を見つめていたら、ふいに目が合った。

そんなあまりに急な律さんの行動は、私のすべてを停止させるのには、充分で。

律さんが私を見つめる目から、目が離せない。

それでも恥ずかしさの限界まで耐えて、そろそろと律さんの目から目線を外した。

…と、

「どうして目、そらすの?」

鋭い指摘を繰り出す、そのくちびるを見つめた。

詩さん。

私の名前を呼んでくれる、くちびる。

返事も忘れて見とれていたら、

詩さん。

再度、囁かれた私の名前。

律さんが私を呼んでくれる声が、ふわふわと空中を舞って、私をゆっくりと包んでゆく。

ぬくいぬくい、温度と優しさで。