今朝は、早朝から撮影だったために、まだベッドの中で眠る私に、

「行ってきます」

そっとキスをして、部屋を出た律さん。

帰って来てくれた律さんの青いカーディガンからは、外の秋のにおいが薫った。

秋のにおいが、結構好き、だ。

律さんが連れてきてくれた、秋はなおさら。

「これは、なに?」

私の前まで来た律さんは、私の手首を掴んだ。

ぬくい体温は、私の糧。

この状況でさえ、律さんの目が私を見つめてくれている事実が嬉しくて。

「こら。まぁた、あなたは。ひとりで笑うのは反則、でしょう?」

片手は私の手首を掴んで、片手で私の頬をつねる。

「…律さん、痛い、です」

「つねっているんだから、当たり前でしょう?」

「……、」