背中でドアが開く音がして、思わずぎくりと体が固まる。

今日に限ってなんで、玄関のドアが開く音に気がつかなかったのだろう。

自分自身に自問自答する。

「ただいま」

その甘い声は、強ばった背中をほぐしてゆく。

律さんの甘い声に抗えずに、この状況を忘れて、

「おかえりなさい!!」

ありったけの笑顔で振り向いた。

そんな私の姿を見て、目を見開いてびっくりしている律さん。

びっくりしている顔もかっこいいな。

語尾にハートマークを飛ばす私。

「…あなたはほんっとに…」

もう、耳にタコが出来るくらい聞いたセリフを口にしながら、私に近づいて来た律さんの姿を、ぼーっと眺めた。