No rain, No rainbow-ナナイロのシアワセ-

雨の音がずっとしている。

顔を上げたら、私を見つめる律さんと目が合った。

「大丈夫?」

その声色は、どこまでも優しくて強ばった体に寄り添って、暗いキオクをほどいてくれる。

「落ち着いたら帰りましょう」

あの日と同じドラッグストアの前で、雨音をふたりで聞いている。

あの日と違うことは、律さんの傘が雨粒を防いでくれること。

この傘が、生涯ずっと、すべての雨から私を守ってくれるということ。

私の傘も、律さんの希望になれていることを、ただただ願った。