玄関で鍵が開く音がする。

顔を上げたら、帰ってきてくれた律さんが立っていた。

「どうしたの?大丈夫?」

優しい声音は、ふわふわと頭上を舞って、私の全身を包んでくれる。

「…りつ…さ…」

言いかけた律さんの名前が遮られたのは、強く優しい腕が私を抱き寄せたから。

「大丈夫、大丈夫」

背中を擦るぬくいてのひら。

頭をぽんぽんとしてくれるてのひら。

このぬくさが、優しさが私に向けられていいのだろうか?

だって、私、は…