わざとなのは、まぁ誰が見てもそうだろう。いくら面倒くさいからといって、窓から水を捨てる人間などいない。

 ましてやその下にいた私に謝ることなく、笑っているなどあり得ない。

 しかし、今ここでそれを口にしてしまえば、告げ口をしたように思えてしまう。

 向こうが先にしたコトなのだから、本当はそれを言って助けてもらってもいいのだろう。

 でもそれをしてしまうと、なんとなく彼女たちと一緒になってしまうような気がするから。

 なんとなく、それをしてしまう自分が許せそうになく、私は口をつぐんだ。 

「はぁ。犯人が誰かは、もう分かっている。すまない、全ては俺のせいだアンジェリカ」

「私などに謝るなど、お辞めください殿下。私がいけないのです。子爵令嬢でしかない私が殿下のお近づきになろうなど、不相応なとこをしたせいにございます」

 お友達としてでも、私は他の人から見たら身分が低すぎるということなのだと思う。

 だからある意味、私も自業自得だ。心のどこかで、いつかそうなるような気はしていたのだから。

 それでも、目的のためには殿下に近づくことを辞めるわけにはいかなかった。

 ある意味、私が決めた道。

 さすがに嫌味を言われることは今までも何度かあったけど、ここまでの実力行使は初めて。

 それほどまでに、私はその殿下の知る誰かを怒らせてしまったのね。

 少し、急ぎ過ぎたのかもしれない。反省しないと……。

「そうではない。全ては俺がはっきりしなかったせいだ」

 んと、はっきりとは、何に対してだろうと、疑問が頭をもたげる。

 イマイチ殿下の話が私には入ってこない。

 全ては俺のせいで、はっきりとしてこなかったために、私がその誰かから攻撃を受けたということだろうか。

 はっきりとは? 普通に考えれな、私と殿下の関係性についてだろう。関係性は仲良くしてもらっている友達。

 それをはっきりと? ん?

 私の頭の中にいくつもの? が浮かんでは消えていった。

「えっと、あの、殿下? 殿下、待って下さい」

 しかし殿下は私の問いに答えることなく、医務室を飛び出していった。

 嫌な予感しかない私は、急いで後を追いかけた。