午前7時。

私は二階にあるみーくんとまーくんの部屋を強めにノックする。


......。

......。

返事がない。




やっぱりまだ寝てるよね。


「みーくん、まーくん、起きて」


ドア越しに大きめの声で呼んでみた。

......。

返事がない。



磨手(みがて)磨雄(まお)、起きなさい」



みーくんたちのお母さんの声真似だ。

すると、ドアの向こうから物音が聞こえる。


「おかん~?」


まーくんの声だ。鼻にかかった弱弱しい声。

まだ寝ぼけているようだ。



「私だよ。ねここ。まーくん、起きてよ」

「ん-、子猫?」

「ねここだよ」

「子猫が喋ってる?」

「だから、ね・こ・こ、だってば」

「どうやら僕は夢の中のようだ。おやすみなさい」



そういうと、スタッという音が聞こえて静寂が訪れる。

まーくん、また寝た。


「こらー、起きろー」


再びドア越しに叫ぶが反応がない。



今すぐ、部屋に入って叩き起こしたい。

けど、私にはできない。

幼馴染とはいえ男の子の部屋だ。

もしかすると、見られたくない物が部屋中に転がっていて、本人は見られたくないような恰好で寝ているのでは、とかいろいろ考えてしまうのだ。

でも、このままでは起きてこないだろう。

学校も遅刻してしまう。

世話を任された以上、そんなことはさせられない。




こうなれば最終手段。

私は大きく息を吸った。

「火事だーーーーーー」

ドタドタドタドタ。

ドアの向こうで何かが暴れ始める。

そして......





「火事?火事火事?火事ってホント?」



まーくんが飛び出てくる。

やはり、服を着ていなかった。

......。

あれっ、やけに涼しそうだぞ。

......。

ズボンも履いてないな......。

パンツは?







「いやあああああああああああああ」


体温が急上昇。

思わず両手で目を覆い、怒鳴ってしまった。


「お願い、その恰好どうにかしてーー」