私は幼馴染の双子の兄の方が好きなんです



―――また夢を見ている。


昔の夢だ。


私が川に溺れるよりも少し前の夢。


みーくんがまだ悪ガキだったころの話。


まーくんがまだイジメられていたころの話。


私がまだいつも笑顔だったころの話。




あの頃、みーくんはいつもつまらなそうにしていた。

運動もできるし、頭もいい、その上、喧嘩も強い。

そんなみーくんに張り合えるクラスメイトがいなかった。



当時小学1年生のみーくんはある日、退屈を解消するために、とんでもないことを思いついた。


「夏までにクラスメイト全員泣かす」


そう目標を立てたみーくんは、本当にクラスメイト全員を泣かせることに成功させた。


勿論、クラスメイトの両親がひっきりなしに怒鳴り込み。

一瞬で、近所に悪名轟き、「磨手くんと遊んではいけません」と我が子に命令を出す家庭もあった。


その対応がますます気に食わなくなったみーくんは、近所の窓ガラスを割ったり、人の家の玄関に犬の糞を置いたり、公園のブランコを何回転もさせてぐるぐる巻きにし使えなくしたりと、エスカレートしていった。


幼馴染の私はいつもそばで、その姿を笑顔で見ているしかなかった。


みーくんが悪戯をした人の中には怖い大人もいた。小学1年生のみーくんをグーで殴ったり、チェーンソー持って追い回したり、凶暴な犬をけしかけたりする人もいた。


私は殴られないように、笑顔で関係ない振りをしていた。


勿論みーくんのご両親はみーくんをしかった。

けれど、10回しかっても、20回しかっても、ずっとやり続けた。




みーくんは近所で嫌われ者だった。

町内会でみーくんの悪戯を完全に無視する方針をとった。

構うからみーくんはエスカレートするのだと思われた。



やっぱり、それは正しかった。

大人たちからも相手にされなくなり、みーくんは悪戯することをやめた。

それから、いつも退屈そうにしていた。

もう悪戯するのもめんどくさそうだった。





みーくんはそばで突っ立ってる私に気が付き、笑顔の私に言った。


「お前、つまんないのになんでいつも笑顔で俺に付き回すんだ?きめえよ」


私は答えた。


「幼馴染だから一緒に遊びなさいって」

「はあ、それいつの話だよ、幼馴染が一緒に遊ぶのなんか幼稚園までだからな」

「でも、お母さんが」

「その笑顔でお母さんの言うことをいつまでもはいはいって聞くのかよ。お前みたいな意気地なし、幼馴染とかマジでないわ」

「酷い、意気地なしじゃないもん」



私が言い返すとみーくんは無視をして、どこかへ行こうとする。

私は笑顔で着いていく。

すると、みーくんは立ち止まって振り返る。


「いい加減、俺に構うなよ。お前俺に殴られて酷いこと言われて散々だったろ?いい加減お前も愛想尽かせよ」

「いやだよ」

「しつこいぞ」


みーくんは腕を振り下ろす。

その腕は私にあたり、私はそこで気を失った。




同時に夢から覚める。