しっかし、本当に誰だろう。


こんなことをわざわざ手紙にして言ってくるような奴。まあ、心当たりはだいぶ絞られてくるけど、確信が持てない。


「だいぶ困ってるようだね」私が頭を抱えているのを見て、河野浩介が言った。


「よかったら、力になろうか?」


「いや、あんただけの力は借りたくない」


とは言ったものの、正直河野浩介の力は絶大なものだ。


河野浩介は誰とでも仲がいい。相変わらず男女から人気があって、河野浩介のことを嫌いな人は、瀬花高校の中でおそらく私だけじゃないかと思うほど。


そんな河野浩介の力を借りれば、この手紙の主を見つけるのは容易いだろうとは思う。でも、いや、使いたくない。でも……。


「あーーー、もうっ!」


イライラする。こんなケチ臭い要求をしてくる手紙の主もそうだけど、一番頼りになりそうな奴が、よりにもよってこんな奴しかいないってことが特に腹立つ。


「わかった。協力して?」


「おっけ。とりあえず場所移そうか。LINEで残り16人にそれとなく聞いてみる」


そう言って、河野浩介は私をエスコートする。手を取って、ローファーに履き替えさせ、歩きながら、時々、私の方を振り返って微笑む。


その度に私は、いつキスされるのか、びくびくしながら、口元を手で覆って歩いた。