「あの時、あいつさえいなければ、今頃……」


とふいにまたつぶやいてしまって、それが教室中に響いた。旧友青山碧と隣の高橋隆人は寝ていたが、それ以外の生徒から、一斉に私に注目が集まる。


「ミス小泉。スタンドアップ~」沢渡先生にも聞こえたようで、私は顔を赤くしながら立ち上がった。


「何があったか知らないけど、今は真面目に授業を受けようねえ~」


「す、すみません」


謝って席に着く。隣を見ると、高橋隆人が伏せた顔を私の方に向けて、「どうした?」と口パクで言った。


「なんでもない」


という意味を込めて、手をひらひらさせると、高橋隆人はまた顔を伏せて、寝に戻った。