私は賀来くんが引っ張っていかれるのを呆然と立ち尽くして見ていた。すると、サルちゃんと呼ばれた子と目が合った。
「あなたは……」
「あ、ごめんなさい。壁にもたれかかってたら、ここに来ちゃって」
「いえ、そうじゃなくて」と言って、サルちゃんは私にずいっと顔を近づけてきた。
「うーん、勘ですけど……」
「な、何かな?」
キスでもされるのかな?
「とても他人には思えないですね。境遇が似ているというか、何というか。難しくて言葉にできませんけど」
と言って、サルちゃんはまた賀来くんを引っ張って、部屋を出て行った。
サルちゃんと同じことを私も感じていた。
どこか他人じゃない。何か、そう、境遇。境遇が似ていると、そんなわけないのに、強くそう思わずにはいられなかった。
「もしかして、サルちゃんも元カレ17人いたりして……」
と一人つぶやくと、「元カレ」のワードで約束を思い出し、慌ててスマホを確認した。
『中庭で待ってるね』
こうしちゃいられない。



