「へえ、そんなことがあったんだな」と隣で聞いていた高橋隆人が言った。 「俺は怖かったイメージしかねえけど」 「あんた、和泉の家、言ったことがあるの?」 と驚いたように、青山碧が聞く。 「ある。玄関先で挨拶したら、確か……『どこの……』」 「『どこの馬かわからないような鎖骨は俺が噛む!』って言ったんだよ」 「ああ、そうだったそれだ。それであの親父さん、本当に噛もうとして、追いかけてきたんだよ」 「なるほどね」と青山碧が笑う。 「和泉のお父さん、よっぽど緊張してたんだね」