行く当てもなく、泣きながら私は神社の近くに合ったゲートボール場に来た。
そこのベンチに座って、エンエン泣いていると、「どうした?」という声が聞こえて、横を見ると、そこにもベンチがあって、一人の男がキャンバスを前に、筆を咥えていた。
それが当時隣のクラスの高橋隆人だった。
私は亀を飼っていたこと、亀はゴロウさんという名前だったこと、そのゴロウさんが死んだこと、ずっと泣き続けていたこと、阪神が負けてしまえばいいと思ったこと、すべてを話していた。
すると、高橋隆人はうんうんと頷きながら聞いてくれて、それから一言、
「なら、阪神が負けるように俺も横で祈ってやるよ」
と言って、私の手を引っ張って、走り出した。
「でも、キャンバスいいの?」
「どうせ夏休みの宿題だから。あんなのやる気ないし」
「宿題やらないと先生に怒られるよ?」
「だろうな。でも怒られるだけだ。何も殺したりはしないだろ?」



