デパートから出ても、河野浩介は株式会社しつこいの代表取締役社長。
「ねえ、頼むよ!」
「しつこいってば!」
「あーあ、和泉は頑固だよね。ここまで言われたら普通、譲るもんだと思うけど」
「生憎、普通じゃないので」
「そうだった。なんせ元カレが17人もいるくらいだからね」
こいつ。いじけているのか、ケンカ売ってるのか知らないけど、貰う気があるのだろうか。
でも、もういい。疲れた。ここまで来るとさすがにもう、どうでも良くなる。
特に欲しかったものでも、ましてや思い入れのあるものでもないせいか、今、小脇に抱えたこれが、時限爆弾のようなものに思えて、一刻も早く手放したい。そんな気持ちにすらなっている。



