結局、私は観ずに、高橋隆人と別れ、坂井海と映画館を出た。
「海はあの映画、どう思った?」
「どうとも」と坂井海は答えた。
「よくわかんなかったし」
「……」
「……」
……これは、もう私のターンということなのだろうか。そういうことにする。
「そりゃ、私もあんまりよくわからなかったけどさ、なんか、こう、あるでしょ? 感想」
「うーん、感想……」と坂井海は考え込んで、言った。
「あの女優の生足がよかった……かな」
「何それ」
「あー、あとテーブルの上にあった灰皿。あれ、うちのやつと同じだったわ」
「あ、確かに! って、そんなことじゃなくてさ!」



