クラスの男子が全員、元カレだった件





「私は私?」


「ああ、小泉は小泉だ。あの頃から何にも変わってねえ」


あの頃?


「あの頃って、その……付き合ってた頃と……ってこと?」


高橋隆人が頷いた。


「俺、映画観るようになってから気づいたんだけどさ、人って割と簡単に変われるもんだなって思ってさ」


「そうかな?」


「そもそも、自分を作っているのってさ、自分の周りにあるいろんなもの、例えば言葉だったり、音楽だったり、花だったり、景色だったりすると思うんだよ。人もそのうちの一つで、周りにいる人によって、自分を演じ分けているというか、不思議とそういうキャスティングになってしまう。そんな気がするんだよ」


「うーん、少しわかりにくい……かも」


「つまりさ、不良ばっかりの高校に行けば、同じように不良になる奴もいれば、真面目に勉強して、浮いた奴にもなるだろ? 逆なら不良が浮くことになる。上手く言えないんだけど、そういうことなんじゃないかって」


「それって、自分というものは、周りの評価で決まってくるってこと?」


「多分、大体、そんな感じだと思う」


「なるほどね」と私は感心した。


「ひょっとすると、私たちも神様という演出家や脚本家によって編み出されたキャラクターでしかないみたいな、そんな存在なのかもね」


しかし、とも思う。


高橋隆人は私に「変わってない」と言った。


でも、逆はどうだろうと考える。


私の周りは、私の知っているソレで在り続けているのだろうか。


なんか、違う気がする。


ここにいる坂井海だって、それこそ高橋隆人だって、少しずつ変わっていて、その周りにいる私も変わっているのだとしたら。


私は高橋隆人と同じ速度で、まるで行進のそれみたいに、足並みを揃えて変わっていっているのかもしれない。


そりゃ高橋隆人は、私の変化に気づけるわけがない。