坂井海は朝にとにかく弱い。
坂井海の部屋に入ると、案の定、坂井海は寝ていて、スマホのアラームが鳴り響いているにもかかわらず、一向に起きる気配がない。
「海。ほら、起きて」
まだ坂井海と付き合っていた時、学校に一緒に通っていたのだけど、ほとんど毎日、私がこうして坂井海の部屋を訪れ、起こしてあげていた。
「……んん、赤」
そう坂井海が言う。それに対して私は、「情熱」と答えた。
「……黒」
「サンマのはらわた」
「……茶色」
「マッチ箱の横の擦る面」
「……青」
「加持さんが吸ってるタバコの銘柄の箱」
「……加持さん?」
「ああ、私の行きつけの喫茶店のマスターのこと」
「……ああ、そう」
そうしてやっと坂井海は目を覚ます。近くに置いてあったメガネをかけ、あくびをし、それから首を右に左に動かし、ゴキッボキッと鳴らした。



