朝、電話がかかってきた。


目がなかなか開かず、まあ誰でもいいだろうと電話に出てみると、


「お嬢! おはようございやす!」


と、元カレNo.11の柊主人公だったので、黙って切った。


しかし、すぐにまた電話がかかってきた。


「ちょ、ちょっとお嬢! 急に切るなんてひどいっスよ!」


「ひどいのはあんたっスよ……何時だと思ってんの……」と言って、スマホで時間を確認すると、5時前だった。


「本当に何時だと思ってんのよ! ばっかじゃないの!?」


「すいやせん! しっかし、お嬢! 大変なんスよ!」


「何が?」


「今日、花袋デパートの中にあるクレープ屋のクレープが全品半額なんスよ! よかったら、お嬢、あっしと一緒に……」


電話を切った。そして私は電話をしている最中も、一切起きなかった青山碧の寝顔を覗き込んで、鼻をぎゅっと摘まみ、そのまま寝た。