そして始まったバーベキュー。
男性陣はせっせと肉を焼き、女性陣はただ皿に乗せられた肉を焼く。
これは小泉家と坂井家のカーストを見事に表している。
うちと同様、坂井家もお母さんがカーストの頂点に君臨している。
「ほーら、海くんもちゃんと食べるのよ?」
そうお母さんが坂井海に気を利かせて言った。坂井海は、「あ、はい」と言って、自分で焼いた肉を口へ運ぶ。でも、すぐにまた肉を焼く作業に戻る。
「海は相変わらずだね」
と青山碧が言った。私もそう思う。何を考えているのか、まったくわからない。
坂井海は本当にわからない。
例えば、うどん屋に行くと、山菜そばを食べる。ポップコーンを食べたいと言って、映画館に映画を見ずに買いに行く。寿司ネタで一番好きなのは、ハンバーグ寿司だし、ピザには粉チーズをこれでもかってくらいかける。
今も、焼いた肉を、塩こしょうでも、焼き肉のたれでもなく、しょうゆにマヨネーズをかけたものに付けて食べている。
わからないのは、食べ物だけではない。
家は十分裕福なのに、コンビニでアルバイトをしているのもそうだ。



