「あれ? 海は?」と青山碧が椅子に座り、テーブルに置いてあったジュースを勝手に開けながら聞いた。
「まだバイトだって言ってたよ。さっき、連絡来てた」
「へえ、あんたたち、別れたくせにまだ連絡とってるのね」
そう青山碧が言って、お父さんとおじさんがぴくっとした。そして、お互い顔を合わせると、ふんっ。そっぽ向いて、それぞれ発泡酒を飲んだ。
「そりゃ、家だって真向かいだし、連絡ぐらいはとるわよ」
「あー、私だったら絶対無理だわ。いくら家が真向かいだろうが、幼馴染だろうが、親戚だろうが、絶対連絡しないもん」
まあ、青山碧の言うことにも一理ある。というか、それが正しい別れた者同士の付き合い方なのだと思う。
その点、私は何人の元カレと連絡を取っているのだろう。何なら、ランチも一緒にしたり、家に行ったりもしている。
そこまでの関係なら、そもそも別れなければよかったのではないか。そう思われても仕方がない。
でも、別れてわかることもある。電車を駅のホームで見ると、早すぎて目で追えないけれど、遠く離れた丘からならよく見えるみたいに、近すぎると見えないことも、離れることで見えてくる。



