待ち合わせ場所の駅に行くと、金井奏太はヘルメットを渡してきた。


「どこに行くの?」と渡されたヘルメットを被りながら聞くと、金井奏太は、「特に決めてない」と言った。


「それなら海に行きたい」


「……卵を産みに?」


「SEAのこと! S・E・A!」


「冗談だよ」と金井奏太は笑った。


「んじゃ、しっかり掴まって」


エンジンがかかる。私は金井奏太の腰に手を回した。


走り出すビッグスクーター。駅のロータリーを歩く、瀬花の制服を着た生徒が、私たちを見る。


目立つ。でも、私服でヘルメットを被った姿に、誰も私たちだと気づかない。