常盤七葉がトレイを持って戻ってきた。
「秋澤、何の話をしていたのだ?」
「別に、ただ勉強の話をしていただけだよ」
そう言って、秋澤明人は私に目配せをしてきた。一瞬、何のことかわからなかったけど、ああ。私はすべてを理解した。
常盤七葉の方を見ると、うん、やっぱりだ。露骨に嫌そうな顔をしている。
「それはそうとして、小泉和泉!」と常盤七葉が席に着くなり、またすぐに身を乗り出して言った。
「陸上部に入ってくれないか?」
「いいよ」
と私はサラッと答えた。
「ほ、本当か?」
「ただし、条件がある」
「ほお、条件か! いいだろう! 聞こうじゃないか!」
「もし、あんたが次の期末テストの順位で、学年で50位以内に入ったら、その時は陸上部に入ってあげる」
やはり、常盤七葉は露骨に嫌そうな顔をした。
そう。初めからこうすればよかったのだ。
勉強嫌いの常盤七葉には、勉強に関する条件を提示してやればいい。
「よ、よし……わかった!」と常盤七葉は顔を引きつらせて言った。
「絶対に期末テストで50位以内に入ってやる! その代わり、私が入れた時は……」
「わかってるよ。私も入る」
どうせ無理に決まってる。学年ビリがいきなり50位以内なんて、無理に決まってる。
それに、こいつ。バカだから、期末テスト前に予選が始まることに気づいていない。万が一にも、50位以内には入れても、その頃には私は大会出場資格を失っている。



