でも、伝わりそうにない相手が一人いる。
レジの方を見ると、その伝わりそうにない相手はメニューを凝視しながら、何やらうーん、うーんと唸っていた。
大方、何を飲むかで悩んでいるのだろう。常盤七葉の後ろには長い列ができていて、店員さんもとても困った顔をしていた。
「ねえ、陸上部に勧誘されてる話なんだけど……」
「ああ、俺からも頼んでくれないかって、常盤から言われているよ」
「それ、何とか断ってくれないかな?」
「まあ、そういうだろうなって思って、断っておいたよ。ただ、当の本人はまだ諦めてないみたいだけどな」
「やっぱそうだよね……」と私は深いため息をついた。
「ねえ、どうしたら断れるかな? 口で言ってもダメなんだよ?」
「んー、そうだな……」と秋澤明人は、顎に手を当て考えた。
「他の部活に入るって言えば、諦めてくれるんじゃないか?」
他の……部活……?
「まあ、確かに……でも入りたい部活って特にないんだよね……」
「入りたい部活がないなら、いっそ作っちゃうのもいいかもしれないな」
「部活を一から作るの? 今の時期に?」
「まあ、例えばの話だよ」



