「常盤とのレース、見たよ」と秋澤明人は言った。
「正直、感動した」
確かに言った。「感動した」と。その言葉がとても嬉しくて、私は「えへへ……」と声が出るほど照れてしまった。
「でも結局負けちゃったんだけどね……」
「それでも感動した。勝ち負けとか、タイムとかじゃないんだ。何か、気持ちがこもったような走りに思えて。見ているだけで、身体中からぶわーっと何かが湧き出るような、そんな感覚だった」
「ホント? そう改めて言われると、なんか恥ずかしいね……」
にしても、秋澤明人、嬉しいことを言ってくれるじゃないの。
「でさ、俺考えたんだけど、もう一度やってみようかなって」
「え?」私は思わず席を立った。
「やるって、陸上を?」
秋澤明人は頷いた。
「気づいたんだよ。俺、やっぱ走るの好きなんだなって」
「うん。私も、走ってる秋澤くん見てるのが好き」
「だろ? やっぱそうだよな」
「うん。その方が合ってる」
なんだ、ちゃんと伝わっていたんだ。
私が伝えたい気持ち、しっかりと。



