「小泉和泉! サイズはどうするのだ?」
「Mで」
「なんだ? 聞こえないのだが」
「Мです!」
周りの視線が一気に私に集まった。
あ、いや、違う。そういう意味じゃない。性癖を暴露したとか、そういうことじゃないんだ!
と、誤解を解こうとしても、何をどう言えばいいのか、わからない。
ほんと、伝えることの難しさってやつは。
と、打ちひしがれていると、常盤七葉の後ろに秋澤明人の姿が見えた。一言二言、常盤七葉に何かを話して、秋澤明人は私の方へ松葉杖を突きながら歩いてきた。
「ごめんね。急に時間作ってもらったのに、遅れちゃって」
「いいよいいよ、怪我してるんだし……あ、座って座って!」
と言って、私は椅子を引いた。しかし、その椅子、私の隣だ。4人席で隣同士で座るなんて、バカなカップルがするみたいだと思って、少し恥ずかしい。
そもそも、もうカップルではないのだし、別にいいんだろうけど、傍から見ると、きっとそうは見えていない。
「おい、見てみろよ。バカなカップルが隣同士に座ってるよ。対面に座った方がお互いの顔見ながら話せて楽しいのにねー」
「で、どうせ同じもの注文するんだよ。それぞれ別のもの注文してシェアし合った方が楽しいのにねー」
なんて声が聞こえてきそうだった。



