放課後、待ち合わせ場所のカフェに行くと、秋澤明人はまだ来ていなかった。
来ていなかったが、その代わりに、なぜか常盤七葉がニヤニヤした顔した待っていた。
予感的中。
「やあ、親友。よく来た!」
「いつ私たち親友になったんだよ」とつっこむ気力もなく、仕方なく座る。
こういうことだったのか。大方、常盤七葉が秋澤明人に頼んで、呼び出したのだろう。だるい。
「小泉和泉は何を飲むんだ?」
「アイスロイヤルミルクティー」
「よし、私が買ってきてやろう!」
なんて恩着せがましい奴なんだ、常盤七葉。
はっきり言っている。私は陸上部には入らない、と。一生懸命伝えようとしているのに、それが伝わらないときの、つらさったらない。
でもそれは秋澤明人に対しても言えることだ。伝えることの難しさ。遠まわしでも、直接的な言葉でも、伝わらないときは伝わらない。
言葉って、伝えるのって、本当に難しい。



