「位置について」の合図で、私は地面に片膝と両手の指をついた。同じように、常盤七葉もいくつかの動作の後、片膝と指をつく。
「よーい……」
パンッ!
スタートは好調!
そう思っていたけど、私よりも少し前にはもう常盤七葉がいる。
やっぱり速い。でも、離されていない。いや、むしろぴったりと後ろをついている。
いけそう……かもしれない!
そう思うと、自信になって、不思議と足が前へ、前へ進んでいく。軽い。身体が跳ねるように、前へ、前へと出る。
風を頭で斬って、まるでミサイルにでもなったように、シュルシュルと音がする。
もう少し。もう少しだ! もう少しで、常盤七葉と並ぶ! もう少し……。
と思っていたら、急に常盤七葉のスピードが極端に落ちた。
今だ! とスピードアップする。しかし……。
「私の勝ちだ」