それからも私は休憩をとり、氷を当てながらアイシングを受けながらも、練習に明け暮れた。
タイムは伸びたり、伸びなかったりを繰り返したけど、レース運びはだいぶマスターできた。
「今日はここまでにしよう」と金井奏太が言った。
「明日はいよいよ本番だからな。ストレッチとアイシング、忘れるなよ?」
気が付くと、トーエダスタジアムには照明が灯っていた。
こんなに何かに真剣に打ち込んだのって、それこそ小説を書いたとき以来じゃないだろうか。
でも頑張った。短い期間とはいえ、私は頑張ったのだ。
「さあて、バイキング、バイキング!」
「はいはい、ちゃんと準備してるよ。もちろん、部屋もね」
と当枝冬馬が笑った。
「あ、もちろん、金井くんの分もね。泊っていくでしょ?」
「いや、泊まりはいいや。食事だけは、せっかく準備してくれたんだし、ご相伴に預かろうかな」と金井奏太は言った。
「あ、でも。お前は食べ過ぎるなよ?」
……へい。



