「ねえ、どうじよお……」
と放課後、私は金井奏太に泣きついた。
「知らねえよ。お前がそんな条件飲むのが悪いんだ」
「だっで……知らなかったんだもん。常盤さんが事あるごとに勝負を引き受けて、奴隷を大量生産してるって……」
これは後で高橋隆人に聞いた話だ。
なんでも、常盤七葉に走りで勝負を挑む人は、今までに数多くいて、その条件がどれも、「奴隷になるか、ならないか」ということらしい。
そして、挑んだ相手は当然勝負に負ける。負けた人たちは常盤七葉の奴隷になり、弁当を作らされたり、ジュースを買いに行かされたり、中には、陸上部の大会や合宿にも同伴させられ、お風呂で背中を洗ったり、食事の準備をさせられたりするらしい。
そんな本格的な奴隷だとは知らず、かと言って、引くわけにもいかず、私はその条件を吞んでしまったのだ。



