「いつにする?」
と常盤七葉が聞いた。
「私はいつでもいいけど」
「なら、私もいつでもいい。何なら今から勝負したっていい。絶対に勝つし」
「そんなのやってみないとわからないじゃない!」
「わかる。だからお前はバカだ。お前は私がどれだけ速いか知らない。そして、これからどれだけ速くなるかも知らない。未来の世界チャンピオンにお前は、勝負を仕掛けている。お前はバカだ。私よりも大バカだ」
言ってくれるじゃないの、常盤七葉。
「なら明日の放課後でどう?」
「いいだろう。明日の放課後、部活の練習前に相手してやろう。だが……」と常盤七葉は言った。
「もし、万が一、億が一、兆が一、お前が勝った場合はどうなる?」
「別に何もないよ。何も望まない」
「それはつまらない」と言って、常盤七葉は顎に手を当て、うーんと唸った。
「よし、それじゃあ、兆が一、いや、京が一、お前が勝った場合は、私はお前の奴隷になろう。で、私が勝った場合は、お前に奴隷になってもらう。これでどうだ?」
あ、私、奴隷決定だ。
でも、もうやるっきゃない! 自分のことなんかより、誰かの夢を大事にしたいんだ。
「わかった。じゃあそれで」
「逃げるなよ。まあ、レースでは逃げ切れないだろうけどな」
そう言って、常盤七葉は席に戻って行った。



