とりあえず、今はやめておいて、退散しようとした時、振り返った後ろに風を感じて、また教室の方を見ると、目の前に人がいた。
「わっ!」
と驚いて仰け反り、見るとそこには常盤七葉がいた。
ってか、速っ!
「何の用だ?」
と常盤七葉は口をもぐもぐしながら言った。
「いや、実は勝負をしてもらおうと……」
「勝負? 何のだ?」
「それはまあ、100m走を……」
私がそう言うと、常盤七葉は腕組みをし、私の方をじーっと見た。そして言った。
「お前はバカなのか?」
確かにバカかもしれない。学年の女子で、いやおそらく県内で一番足が速い女子に、私は勝負を申し込んでいるのだ。
バカだって思われても仕方がない。だから言ってやった。
「あ、あんたよりは勉強できるもん!」
すると、常盤七葉はわかりやすくムッとした表情をした。



