それからしばらく練習を続け、気が付くと夕方になっていた。


「今日一日でだいぶ速くなったんじゃないかな?」


と聞くと、金井奏太は「そうだな速くはなったと思う」と言った。


「でも、速くなったからといって何なんだ?」


「それはさっき言った通り、秋澤くんに私が走ってるところを見せて、もう一度やる気になってほしいって思って……」


「でも小泉が速くなったところを見てもらって、すげえってなるか?」


「どういう意味?」


「つまり、誰かと勝負するのを見せるのがいいんじゃないか? それも秋澤明人が驚くような、速い奴とさ」


言われてみるとそうだ。


私が一人、100mを走ったところで、秋澤明人が「すごい!」となるはずがない。そもそも私がどれくらいのタイムで走るのか、秋澤明人は知らないのだ。


それなら、誰かと勝負するところを見てもらった方がいい。でも、誰がいいだろう。足が速くて、秋澤明人も驚くような人……。


「やっぱり陸上部じゃねえの?」


やっぱりそうなるか。