呼吸を整えて、さっき走り抜けた道を戻り、金井奏太に「どうだった?」と聞いた。
「悪くはない」と金井奏太は言った。
「悪くはないけど、それは元々の運動神経によるものだと思う。走り方を変えれば、もっと速くなる」
「本当? 具体的にどこを変えたらいいかな?」
「まずはスタートだな。スタンディングスタートより、クラウチングスタートの方がいい。前傾姿勢のまま、強く地面を蹴れる」
「クラウチングスタートって、陸上選手がやるみたいな、手を地面に付くやつ?」
「そうだ。そして、前傾姿勢のまま飛び出す。お前は顔が上がりすぎて、風の抵抗を受けている。それだとタイムは伸びない。前傾姿勢を意識して」
「わかった。前傾姿勢ね」
「あと、走ってる時はかかとは地面に付かないように。つま先と親指の付け根で地面を蹴るんだ。チーターのように」
「なるほどね。その方が身体が前に出やすいってことね?」
「そうだ。以上を踏まえて、もう一度走ってみようか」