「私が今、したいことだよ! 走りたい! 思いっきり、走りたい!」
「いや、やりたいようにとは言ったけどさ……」と言って、高橋隆人は頭を掻いた。
「それが何かになるのか?」
「ならないかもしれない。でもなるかもしれない。私、思いっきり走りたい。速く、秋澤くんみたいに。ねえ、誰か足速い人知らない?」
「聞いてどうすんだよ」
「速く走れるように特訓してもらうの!」
「そりゃ特訓はいいけどさ……」とまた高橋隆人が頭を掻いた。
「俺が知ってる奴で、足が速い奴は秋澤の他に、一人しか知らねえ。でもそいつでいいのか?」
「なんだ、知ってるんじゃない! 私は誰でもいいの! ねえ、それ誰?」
「金井だよ。同じクラスの」