「そっか」と言って、やっぱり秋澤明人は笑った。そして、
「ごめんね? 俺は退散するよ」
そう言って、松葉杖を持って、屋上を出ようとする。
「そうじゃなくて、私は秋澤くんの本当の顔を見たいの!」
「本当も何も、これが俺だよ」
「違うでしょ? 秋澤くんは無理してる。本当は泣いたり、怒ったりしたいくせに、無理してるんだ!」
何だか、私の方が泣きそうになった。いや、もう泣いていたのかもしれない。
それを察したのか、秋澤明人は踵を返して、私の方にゆっくりとした足取りで近づいてきた。
「そりゃ、俺だって泣きたいし、怒りたいさ」
「だったら……」
「でも、それで何か解決するのか?」
「しないよ。解決なんか」
「だったら……」
「でも、心は少しだけ軽くなると思う。心に溜まってるものが、涙に変わって、洗い流してくれると思う」
「そっか」そう言って、秋澤明人は私の頬に指を当てて、涙をぬぐった。
「なら、これでいい。俺の悲しみとか、怒りは今、小泉が代わりになってさらけ出してくれた。これでいいんだよ、これで」
そう言って、やっぱり秋澤明人は笑った。



