それから私たちは昔みたいに小説談義で盛り上がった。
私は最近読んだヘミングウェイの「武器よさらば」について語った。長田治はフィツ・ジェラルドの「グレートギャツビー」こそが名作だと言った。
「いいね、私もギャツビーみたいな人がいればなあ」
「……そしたらキミはさしずめデイジーってところかな?」
「……嫌な女ね」
「……嫌な女だね」
「でも私、デイジーの気持ち、わかるかも」
「……そう?」
「うん。わかる」
お互いの紅茶とコーヒーがなくなるまで語った。そして改めて気付く。
やっぱりこういうのがいい。
「また連絡するね」
「……うん。待ってる」
「小説も、待ってる」
「……うん。毎朝届ける」
「受け取る」
「届け続ける」
「受け取り続ける」
「完成させる」
「楽しみにしてる」
「そして、小説家になる」
「なれるよ、長田くんなら」