当枝塾の成果もあって、とりあえず1日目のテストの出来は上々だった。


当枝冬馬は、「明日の教科の勉強もする?」と誘ってくれたけど、私は断った。もう十分、勉強できたし、せっかく午前中で終わる今日くらいは、ゆっくり過ごしたいと思った。


そして向かった喫茶店「レインリリー」。マスターの加持さんは相変わらず咥えタバコで皿を磨いていて、私に気づくなり、「いつものか?」と聞いた。


「はい、お願いします」


そして、紅茶が出てきたちょうどのタイミングで、カランコロンと音が鳴って、振り返ると、長田治がいた。


「……小泉さん、もう来てたんだ」


「うん。急にごめんね。どうしても小説の話、したかったから」


長田治はこの前と同じようにブラックコーヒーを注文した。そして、それが来るのを待ちながら、私は長田治からもらった原稿を取り出した。


「これ、すっごく面白い」


「……本当?」


「うん。書き出しから引き込まれたし、その……あの時のこともいろいろ出てきて、よく覚えてるなって……」


「……そりゃ、僕はずっとキミを見てたからね」