お互いの頼んだセットが運ばれてくる。 「いただきます、しようか」 と河野浩介が言う。私は「あ、うん」と答える。 「いただきます」 「いただきます」 河野浩介は、サーモンのクリームパスタを、フォークとスプーンを使って綺麗に食べた。 唇にはクリームが一切付いていない。 対する私は食べたくもないイカスミパスタを、フォーク一本でなるべく急いで食べた。 唇は悪魔のように黒くなり、まるで返り血のように、顔の周りにも飛び散った。 さあ、準備万端だ。 これで河野浩介は、キスができない。