青山碧に言われて、始まった勉強会で私は当枝冬馬が好きになった。
当枝冬馬も私のことが好きになった。
それからどちらからともなく、付き合うことになった。
当枝冬馬は優しかった。なんでも私に合わせてくれるし、喧嘩も一切なかった。
「ああ、私はきっと将来、この人と結婚するんだろうな」
とまで考えていた。
でも、付き合っていくうちに、私は当枝冬馬のことがだんだんわからなくなった。
当枝冬馬は優しいし、気も利く。
でも、当枝冬馬がどんな人間なのかは、一向に見えなかった。
一向に見えない当枝冬馬は、まるで月に隠された太陽のように思えた。



