「そもそもさ」と青山碧がベッドから起き上がって言った。
「なんで別れたわけ?」
私はどの人のことを言ってるのかわからず、「何番目の話?」と聞いた。
「2番目……だっけ? 当枝くん」
「あー、まあいろいろ」
「いろいろ? どうせまた、あんたのわがままとかじゃないの?」
「そりゃそうだけど……」
「もったいないよね。だってこんな金持ちなんだよ? おまけに性格もいいし。当枝くんの悪口言ってる人、聞かないもん」
確かに当枝冬馬は性格がいい。純粋だし、欠点もないといっていい。
だから私は付き合った。でも私は別れた。
そこにあるのは、別に喧嘩したとか、価値観の違いではない。
私がただ、一方的に当枝冬馬から逃げただけのことだ。



