そして、迎えた29日昭和の日。
私と青山碧、高橋隆人は駅前のカフェで待ち合わせして、当枝家に向かった。
「なあ、小泉」と高橋隆人がぽかんとした顔で言った。
「当枝の親ってさ、石油でも持ってんの?」
「さあ、テレビマンって話は聞いてるけど、やっぱり何回来ても圧倒されるわ」
そう、見ての通り、当枝家は金持ちなのだ。
それも絵に描いたような金持ちで、大きな門の前に執事とメイド、広大な庭には噴水があり、奥に白くて見ただけでホワイトハウスじゃないかと思うほど、大きな家がドンッとある。
「まあ、いいじゃん。石油持ってても、脱税してても、強盗組織のリーダーでも。ここまでお金稼げたらなんでも才能よ」
と青山碧が言って、遠慮の「え」の字もない様子で、ずかずか歩いていく。



