私はもう、何も言わずにカバンを持って、席を立った。
そして、カランコロンカランと鳴る扉に手をかけた時、長田治の声が微かに聞こえた気がして、私は振り返った。
「……キミが好き」
「はあ?」
私はもう一度、席に座った。
「キミがって、私のこと?」
すると、長田治は頷いた。
「でもそれならなんであんなことしたの? 普通好きだったら、そんなことしないじゃん」
「……許せなかった」
「私が?」
長田治が首を横に振った。
「三島くんは彼女がいるのに、キミに思わせぶりな態度をすることが、どうして、許せなかった」



