三島志麻はあごに手を当て、しばらく考え、それから口を開いた。
「一応、挨拶みたいなことをした覚えはある」
「誰に?」
「名前忘れた。でも同じクラスの奴だよ」
三島志麻らしい答えだった。
「どんな特徴だったか覚えてる?」
「確か、メガネして、髪の毛に若白髪が混じってた」
長田治やないか。その特徴は完全に、元カレNo.15の文芸部員、長田治やないか。すぐわかったよ。
「他にどんな特徴があった?」
「なんかコーヒー飲んでた」
ほな、長田治とちゃうか。長田治は私と一緒でコーヒー飲めんかったからね。それは長田治とちゃうよ。
「んで、なんかノート出して、いろいろ書いてた」
長田治やないか。長田治は執筆をカフェでしとったからね。その特徴は完全に長田治よ。
「多分、宿題をしてたんだと思う」
ほな、長田治とちゃうやないか。長田治は宿題なんかせんからね。夏休みの宿題でさえせんかって、1年の時、先生に引くほど怒られてたんやから。それは長田治とちゃうよ。
「あー、思い出した。長田だ。間違いない。俺を見て、軽く会釈してきた」
やっぱり長田治やないか。