「で、あなたたちは何の用ですか?」
と頭を抱えた生徒会長が聞くと、河野浩介が「ちょっとそれよりも」と言った。
「会長、見事でした。あれ、嘘ですよね?」
そう言われた生徒会長は、フフッと笑い、読み上げていた紙を見せた。
「ええ、これはただのコピー用紙です。何も書かれていません。昨日、歌舞伎の勧進帳を見たんですよ。それで咄嗟に思いついたわけです」
確かに、紙は真っ白で、何も書かれていなかった。生徒会長、かっこいいと思った。
「まあ点数は嘘っぱちですが、特進クラスの編成は成績で選んでいると聞きます。もし紙を見せるように言ってきたら万事休すでしたが、あそこまで恥をかかせておけば、帰ってくれると思ったんです」
なおかつ、狡猾でおそろしいと感じた。生徒会長だけはやっぱり敵に回してはいけない。そう改めて思った。



