嘘だ。急に好きになんか、なってない。 私は今も、昔も、イカスミパスタが嫌いだ。 あの黒い、ドロドロしたものを、口へ運ぶ。咀嚼する。食道から胃へ流し込む。ああ、考えただけでも、おぞましい。 あんなものは、食べ物ではない。歯を黒く染める、イカ味した絵具だ。 それなのにどうして、こんな嘘までついて、イカスミパスタを注文したのか。 理由はこの男。この男のせいだ。