作った弁当を持ち、玄関の鏡の前で、久しぶりにした化粧が変じゃないか確認して、家を出る。


バイト先まで自転車で10分。駐輪場を見ると、原付バイクがあって、休憩室へ行くと、三島志麻がすでに着替えて、本を読んでいた。


「おはよう」


と一応声をかけてみた。しかし、三島志麻はやっぱり何も言わなかった。彼は今、本の世界にいる。


でも、本の世界から、現実の世界に戻った時、三島志麻は私をちゃんと見てくれる。


三島志麻の邪魔にならないように、作業着に着替える。作業着といっても、私服の上にジャケットを羽織るだけでいい。


そして、私も三島志麻が座っているソファーに座った。正面から三島志麻の顔を覗き込む。三島志麻はやっぱり真剣な表情で本を読んでいて、私がどんなにジーッと見ていても、気づかない。