「それ、利用されてるだけじゃないの?」


と、途中寄ったトイレでばったり会った青山碧がトイレの個室越しに言った。


「そんなことないもん! だって謝ってくれたし、話したかったとか、バイト先一緒になれて嬉しいとかも言ってくれたもん!」


と私はトイレの個室越しに抗議した。


「まあ私のことじゃないし、どうでもいいけどさ」


と青山碧が言って、トイレの個室のドアが開く音がした。


「今日もこれからバイト一緒に行って、一緒に帰って、夜もLINEする予定だし」


と私もトイレの個室から出て言った。


「一時的なものだと思うけどね」


「花粉症みたいに言わないでよ」


「大体、あんたもう忘れたの? あいつがあんたを振った時のこと」


もちろん、忘れてはいない。でも、そんなのは過去のことだ。


今が幸せなら、過去はどんなに不幸でもいい。シンデレラのように。


「賭けてもいいけど、その撮影が終わった途端、あんたはまた捨てられるね」


「なんでそう酷いことばかり言うかな……」


「決まってるじゃない!」と青山碧は、洗っていない手で私の肩を掴んだ。


「あんたのことが心配だからよ!」