「お前、元文芸部だろ? もしかしたら脚本も書けるんじゃないかって思って、昨日、バイト先の自販機の前で待ってるお前を見て思ったんだ」
「でも、書いたことないし……」
「セリフと簡単なト書きがあればいい。見本も部室にあるから、できるとこまでやってみてほしい。頼む」
そう言って、三島志麻は頭を下げた。こんな三島志麻の姿を私は一度も見たことがなかった。
むしろ、三島志麻という男は、人に対して謝らない男だ。ガリレオ・ガリレイのように、自分を曲げないところが、三島志麻にはある。
そんな三島志麻が今、「ストーカー」と言った私に頭を下げている。
きっと本気だからなんだ。本気でキミトトクラブのために、自分ができることをしたい。そういう居場所に気づけたのか、見つけたのか。
とにかく、こんな三島志麻を前にしては、私は断るわけにはいかなかった。
「わかった。やってみるね。でも、尺とか、納期は?」
「ゴールデンウィーク中に撮影したいと思ってる。尺は、さっきと同じ10分程度でいい。テーマは任せるけど、役者の数はあまり使いたくない」
私はスマホでメモをとった。
「じゃあ、来週中には書いてくるよ」
「すまん」



